概要
子どもは日々、大人へ向けて発達している。しかし、この「人間化」が子どもの生のすべてではない。子どもは蝶を追いかけながら蝶になり、植物図鑑に載っているひまわりの絵を描き、テレビスクリーンに映し出されたクジラの鳴き声を真似し……。こうした動物や植物などを模倣したり、その絵を描いたり、その声や音を真似たりする「逆人間化」をも行う子どもの生の豊かさを全面的に捉える「贈与‐生成変化の人間変容論」の構築を、ドゥルーズ=ガタリの理論に依拠しながら試みる。
目次
第1章 贈与-生成変化の人間変容論という〈教育学の差異化としての理論〉の構築
― 教育学を超克するために
- 1.現実の子どもの生を捉えることができる贈与-生成変化の人間変容論の構築へ向けて
- 2.〈「与える」と「学ぶ」の交換〉と〈「待つ」と「学ぶ」の交換〉の弁証法とそれにおける発達
- 3.〈贈与としての「与える」〉という出来事とそれにおける生成
- 4.〈生成変化への「待つ」〉という出来事とそれにおける動物への生成変化
- 5.起源としての〈贈与としての「与える」〉と〈生成変化への「待つ」〉という二つの出来事
第2章 教育学を差異化させようとする生成変化
― ドゥルーズ=ガタリにもとづく生成変化と発達-生成のシステム論の構築
- 1.ドゥルーズ=ガタリを読むことによって生成変化を考える
- 2.ドゥルーズ=ガタリの生成変化のシステム論の構成
- 3.ドゥルーズ=ガタリの生成変化のシステム論から生成変化と発達-生成のシステム論へ
- 4.生成変化と発達-生成のシステム論にもとづいた生成変化についての考察
第3章 相互に次元を異にしつつ不可分な関係にある生成変化と死
― 生成変化と発達-生成のシステム論を微粒子-記号の変容論へと発展させるために
- 1.芥川龍之介「歯車」におけるドッペルゲンガーという問題の解明に向けて
- 2.ドゥルーズ=ガタリの生成変化という概念にもとづいたドッペルゲンガーについての考察
- 3.ドッペルゲンガーについての考察にもとづいた「歯車」の基本構造の解明
- 4.狂人への生成変化と死の不思議の環という「歯車」の基本構造の射程
第4章 贈与-生成変化の人間変容論の基礎理論となる微粒子-記号の変容論
― 諸命題の多様体としての理論
著者紹介
森田 裕之 (もりた ひろゆき)
名古屋芸術大学短期大学部専任講師・助教授、名古屋芸術大学人間発達学部准教授を経て2015年より大谷大学文学部教授。博士(教育学)。著書に『ドゥルーズ=ガタリのシステム論と教育学―発達・生成・再生』(学術出版会、2012年)がある。
※発行時の奥付より