定価9,130円(本体8,300円+税)
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現在の中部アフリカの混乱の起点である1990年代のルワンダ、ブルンジ、ザイール等の内戦、Genocide等の事象は、当事者間で一致できる解釈が確立されておらず、今後も確立されにくい、一連の「共振」と言うべき悲劇である。その94年のルワンダにおける発生直後は外部から手を施せない「部族闘争」として単純化され、ルワンダ内戦終息後は、フツによりツチと穏健派のフツが殺されたという見解が新しいルワンダの公式説明として主流となった。だが内戦を戦った双方が、それぞれのGenocideを同時に遂行しており、その結果多くのツチと多くのフツが異なる形で異なる場所で殺された、という異説――「Double Genocide」――の証拠も、21世紀に入り、歴史解釈の変更を促すほど蓄積されてきた。この状況下、第二次大戦後の世界で空前の人的被害を出したこの中部アフリカについて世界は、今なお、どうしたら破局を防ぎえたか、という問いへの答を見出していない。ルワンダ内戦から第一次コンゴ戦争までを振り返り、信頼できるアクターがほぼ皆無である、難問の特徴を考察する。
学習院大学法学部教授。B.L.(東京大学法学部)、Ph.D.(国際政治 Yale University)。Kennedy School of Government(Harvard University)フェロー、慶応大学総合政策学部非常勤講師、上海国際問題研究所客員研究員、復旦大学客員教授、北京大学客員教授。London University,( The School of Oriental and African Studies)客員研究員、Institut dʼAsie Orientale(Lyon)客員研究員、学習院大学法学部助教授を経て現在同大学教授。2018 年よりFree Rohingya Coalition のCitizen Ambassador。
学習院大学研究成果刊行助成金を受けての出版