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ART×国際協力
  • 仕様:A5判並製
  • 254ページ
  • ISBN978-4-88359-388-0
  • 発行日:2024/03/31

ART×国際協力

-世界中に風を通す扉を-Ⅱ 平和を探る

山田 猛 編著

定価2,200円(本体2,000円+税)

在庫:あり

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概要

混迷する国際社会における“納得のいく不一致点”の糸口を手繰り寄せるための場作りを、「ART×国際協力」の視点から探る。世界の振り子は混乱と紛争へと揺れはじめ、緊張感は高まる一方である。政治、経済、宗教、イデオロギー等による強い主張は、相互不信の溝を深め、武力による解決は更なる憎悪の連鎖を生んでいる。文化的存在としての人類は、様々な生活文化を生み出す術で、危険から身を守りサバイバルしてきた。これらの知的創造活動がARTであり、そこには、あらゆる文脈の違いを乗り越え、根元的な人類共通言語としての有効性が秘められている。今こそ平和を模索し、国際社会における“納得のいく不一致点”を見いだすための地球市民レベルでの場作りが必要とされ、そこでの人類共通言語としてのARTの有効性や可能性を、国際協力現場の実践報告及び様々な学術分野の知見から多角的に探る。

目次

プロローグ
  • 1.授かった生を如何に……
  • 2.なぜ、国際協力×造形美術なのか
  • 3.ローカルなところから
  • 4.平和への糸口を探るために
  • 5.目ざされるところ
Ⅰ ART Education × NGO “表現すること”の可能性を信じて
  • 1.美術への扉、そして海外へ
  • 2.東ティモールで美術教育の可能性を知る
    • (1)東ティモールってどんな国?
    • (2)NGO Ba Futuruでの表現活動を通した平和構築プロジェクト
    • (3)東ティモールの若者から学んだ「表現すること」の可能性
  • 3.カンボジアで美術教育事業に取り組む
    • (1)そして、NGO駐在としてカンボジアへ
    • (2)NGO/NPOってなんだろう?
    • (3)カンボジアの美術教育の状況、課題
    • (4)カンボジアの教育史における美術教育の変遷と課題
    • (5)初等科カリキュラム開発のための新規事業の形成、準備
    • (6)カンボジアの新しい芸術教科のフレームワーク
    • (7)目の前に山積みされた課題、解決の糸口
    • (8)カンボジア事業の完了
  • 4.NGOの駐在員として考える
    • (1)外発的な開化と内発的な開化
    • (2)時間をかけて見えてくるもの(カンボジアの美術教育の場合)
    • (3)内発的な変化を促すためのヒント
    • (4)NGOの駐在員として考え続けなくてはならないこと
    • (5)それでも、美術教育を続ける理由
    • (6)美術教育支援の可能性を拡げるために
  • 5.最後に
Ⅱ 形を造りだす力は「繋ぐ」「越境」という言葉に帰結する
  • 1.国際協力の世界へ
  • 2.大学時代に出会った人形劇
  • 3.青年海外協力隊時代に見出したARTの可能性
  • 4.月日を経て繋がる
  • 5.月日を経て、そして、海を越えて繋がる
  • 6.造形美術ではなく、違う道へ
  • 7.就学前教育、保育の質の向上に取り組む
  • 8.遊びを通じた学び
  • 9.コロナ禍で思いついた造形活動の形
  • 10.料理は垣根を低くする
  • 11.国際協力において造形・美術を生業とできるのか
  • 12.最後に
Ⅲ ARTでつながる国際協力
  • 1.ARTの力で何ができるのか?
  • 2.JICA海外協力隊を志すきっかけ
  • 3.JICA海外協力隊の活動
    • (1)モザンビーク共和国ってどこにある?
    • (2)配属先
    • (3)ボランティアとしての最初の活動
    • (4)活動現場における課題と教科の特性
    • (5)技術移転を目的とした実践や工夫(教材・用具不足への対応)
    • (6)美術教育普及への活動の場の拡大
    • (7)環境に対する問題意識
    • (8)活動を行う上で心がけていたこと
  • 4.東京造形大学大学院 造形教育研究領域での研究
  • 5.モザンビークの生徒達と行なった絵本制作
    • (1)絵本制作の概要
    • (2)実施内容及び方法
  • 6.実践報告 ~現地での活動を通じて~
    • (1)アートワークショップ
    • (2)エル・シャダイコミュニティスクールでの実践授業
    • (3)作品展示会 DREAM OF ART(Art Music Dance)CCBM:Centro Cultural Brasil-Moçambique)
    • (4)4年ぶりの配属先の訪問
  • 7.最後に
Ⅳ 平和の糸口を探るための造形美術の可能性
  • 1.実践報告から
    • (1)NGO・NPO活動の視点 カンボジア
    • (2)JICA技術協力プロジェクト専門家の視点 エジプト
    • (3)実践研究としての視点 モザンビーク
  • 2.国際教育協力について
    • (1)国際教育協力の流れ
    • (2)国際教育協力における課題
    • (3)日本のODA教育協力・美術教育関係の成果に繋がる諸要因
    • (4)日本のODA教育協力・美術教育関係の課題
    • (5)開発協力大綱
  • 3.協力における課題からの考察
    • (1)畏敬の念への理解
    • (2)一神教と多神教
    • (3)人類と神
    • (4)神話学からの考察
    • (5)宗教と戦争
  • 4.暴力と平和について
    • (1)平和とは?
    • (2)なぜ人類は戦うのか ―文化人類学の思考―
    • (3)人類が抱える核兵器という脅威
  • 5.課題解決に向けて学術的視点での模索
    • (1)文化的存在としての人類
    • (2)比較文化的視点
    • (3)構造人類学の視点
    • (4)右脳と左脳
  • 6.平和への糸口を探るための造形美術の可能性
    • (1)見えない敵と対峙するための造形美術
    • (2)核に対する造形的表現者たちの視点
    • (3)造形的に伝える
    • (4)造形的視点
  • あとがき

編著者紹介

山田 猛(やまだ たけし)

東京造形大学教授、博士(造形)、東京学芸大学教育学部美術科、放送大学院文化科学研究科教育開発プログラム、東京造形大学造形研究科博士後期課程修了。アルゼンチン国立ミッショネス大学芸術学部講師、アルゼンチン・ポサーダス市立美術館絵画研修講師、青年海外協力隊員としてパラグアイ派遣、国立教員養成校講師、香港日本人学校中学部、東京都公立中学校、国立大学法人東京学芸大学・附属竹早中学校、東京造形大学非常勤講師等を経て現職。

※発行時の奥付より

執筆者紹介

矢加部 咲

大阪芸術大学写真学科を卒業後、熊本市現代美術館に嘱託職員として勤務し学芸業務や市民参加型のアートプロジェクト、ワークショップ、美術館ボランティアの運営などに携わる。その後、青年海外協力隊員として東ティモールへ派遣され、平和構築系ローカルNGO BaFuturuにて、At risk youthと呼ばれる青少年らとともに、芸術表現活動を通してコミュニティー内の平和を推進するプロジェクトに携わる。これらの経験から、国や社会環境を問わない芸術表現活動や芸術教育の可能性を実感し、2014年にカンボジアで芸術教育支援を行う認定NPO法人JHP・学校をつくる会へ入職。現地事務所で当該事業のプロジェクトマネージャー、現地代表を務めた後、2022年に帰国し、現在は東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程1年に在籍。研究テーマは「開発・国際協力分野におけるNGOによる芸術や芸術教育に関わる事業活動の評価」。

神谷 哲郎

国際協力機構(JICA)技術協力「エジプト 就学前教育・保育の質向上プロジェクト」チーフアドバイザー、ペパーソンインターナショナル株式会社代表取締役。東京学芸大中等教育教員養成課程美術専攻、青年海外協力隊(ヨルダン 職種 美術 1991~1993年)、国連開発計画(UNDPガザ事務所 1994~1996年)、JICA本部勤務を経て、エジプト、フィリピン、イラク、パレスチナでコミュニティー開発、参加型開発、農業、教育事業等に従事。2012年に子ども子育て支援を担う社会企業「ペパーソンインターナショナル(株)」を起業。

石田 恒平

多摩美術大学絵画学科油画専攻。大学卒業後13年間、私立聖徳学園中学・高等学校で美術教育の現場に携わってきた。2014年JICA 教師海外研修参加(モンゴル)、 一般財団法人 東京私立中学高等学校協会 芸術体育系教科研究会 美術委員。ACCU ユネスコ・アジア文化センター 日韓国交正常化 招聘プログラム参加、2017年からJICA海外協力隊としてモザンビーク共和国の中等教育学校で美術教育を教える。2022年より東京造形大学 大学院 造形研究科 造形教育研究領域に在籍、実践研究活動にあたる。モザンビークの美術教育の現場に携わってきた経験から、2023年8月に現地調査及び現地での実践活動を実施。

※発行時の奥付より

助成出版

東京造形大学研究助成金を受けての出版(2022~23年度)

装幀